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2024/10/29

荷物の送り状をスマホ作成 ホテルで訪日客向け

ヤマト運輸はスマートフォンで荷物の送り状を作成できるサービスを全国のホテルや空港カウンターで始めた。日本語と英語が使える専用サイトを用意し、受け付けで手軽に発行できるようにする。新型コロナウイルス禍の影響が薄れて国内外からの移動需要が高まるなか、インバウンド(訪日外国人)の利便性を高めて荷量の確保につなげる。
10月から「簡易伝票発行ツール」を運用し始めた。スーツケースや手荷物を次の宿泊先などに発送する際、これまでは手書きだった送り状をスマホで発行できるようにした。届け先は国内に限定し、主力の宅配サービス「宅急便」と「空港宅急便」で対応する。
利用者はまず、ホテルのフロントなどにある2次元コードを読み取り、専用サイトで届け先の所在地や個人情報を登録する。全ての入力を終えると、送り状を発行するためのバーコードが表示される。フロントに用意された専用端末にかざして紙の送り状を印刷し、荷物と一緒にスタッフに預けることができる。
送り先がホテルの場合は、電話番号を入力すれば必要な情報が自動表示されるため、所在地を日本語で詳しく打ち込む手間を省ける。空港に送る際はカウンターの一覧から届け先を選べる。まずは10月末までに全国300カ所で導入する。対応する施設や言語を増やしつつ、駅ナカや観光地の土産店などでも導入できるよう検討する。
ヤマトなどの検証によると、従来はホテルでの発送依頼に10分以上かかることもあったが、スマホで送り状を作れば2分弱で手続きを済ませられるという。ホテルなど観光関連施設では人手不足が深刻化する。ヤマトの事業開発担当者は「手書きに比べてスタッフの手伝いを必要とせず、フロント業務の効率化にも貢献できる」と話す。
新型コロナの影響が薄れ、円安基調も追い風に訪日観光客は急増している。日本政府観光局によると、9月の訪日客は推計287万2200人と8カ月連続で月間最高を更新した。24年に入り、コロナ禍前の19年同月を1〜2割近く上回る水準が続いている。
一方、大きな荷物を持った外国人が新幹線のデッキや客室でスペースを独占したり、特定の観光地に集中したりといったオーバーツーリズム(観光公害)が社会問題となっている。送り状の発行手続きを簡素化することで身軽な地域間移動を促す。交通機関や観光地の混雑を抑えながら配送ニーズを開拓する。
国内人口が減少に向かうなか、訪日客の「手ぶら観光」を促すサービスは新たな事業機会として注目されつつある。ヤマトは観光客向けに自動の手荷物預け機を取り入れた全国初の営業所「なんば駅前営業所」(大阪市)を8月に開設した。日英中韓の各言語でタッチパネルを操作でき、キャッシュレス決済で荷物を預けられる。
佐川急便は荷物の一時預かりやホテルへの当日配送に対応する専用カウンターを首都圏などで展開している。7月には羽田空港内に2カ所あるカウンターを改装オープンし、周辺の大型電子看板で案内するなど、需要開拓に力を入れている。